くず餅とわらび餅ときな粉餅の違いと作り方と産地の違い
2016/02/04
くず餅・わらび餅・きな粉餅が違う食べ物だということはご存知のとおりですが、具体的に何がどう違って、何からどうやって作られているのか自信がない人も多いのではないでしょうか?
そこで、それぞれの違いと作り方の紹介と産地についてお話しますね。
くず餅とわらび餅ときな粉餅の違い
たまにお店でくず餅・わらび餅・きな粉餅を見かけますが、違う食べ物だと頭では分かっているつもりでも、いざ、何が違うのかと説明を乞われたら説明が難しくないですか?
甘味好きにとって、そんな説明なんて朝飯前かもしれませんが、世の中の多くの人には難題だと思います。
それでは葛餅(くずもち)から順番に説明しますね。
〇くず餅とは
くず(葛)という植物から作られています。
この植物は、マメ科クズ属のクズという蔓(つる)状の種類で、マメ科だけあってとても強い繁殖力をしていて、シナクズ・フシゲクズ・トキイロクズ・シロバナクズなど種類もいくつかあります。
くずは地下にある根が長さ150cm x 直径20cmくらいの大きさまで育ち、地上ではつるが10m以上に伸びます。
葉は左右に1枚づつ、真ん中に1枚に分かれた三出複葉(さんしゅつふくよう)という葉が特徴で、白い花が付くものをシロバナクズ、淡い桃色の花がつくものをトキイロクズなどがあります。”実”いわゆる”種”は枝豆に似た房が束になります。
そしてくずの根の部分を使ってデンプンを精製したものがくず粉となります。
・くず(葛)の始まり
関西が発祥とされていて、大和国(現在の奈良県吉野川)の国栖(くず)という産地が名前の由来とされています。
また、食用や漢方薬にも用いられ、700年代(万葉集の頃)から秋の七草にも数えられています。
・くず(葛)は有害な植物?
日本では昔から馴染みの深い植物で、食用に重宝されています。
しかし海外では、1800年代後半にフィラデルフィア万国博覧会で、日本から飼料用の作物や庭園用として紹介されたのを切っ掛けに、荒れ地や人の手が入ったやぶに繁殖するので緑化や土砂災害防止に推奨されるようになりました。
しかし繁殖力が非常に高いことや拡散が非常に速いことから、有害植物と侵略的外来種として”世界の侵略的外来種ワースト100”に指定。
現在も海外では駆除され続けています。
くず(葛)の葉・花・実
・小麦粉から作るくず餅
関東のくず餅とは、江戸時代になってから、小麦粉を発行させて作ったものをくず餅と呼びました。
発祥は今の神奈川県川崎市にある川崎大師で偶然できたことから由来していて、この発酵した小麦を使って餅を作った久兵衛の”久”と無病長寿の”寿”をとって久寿餅(くずもち)と名付けられました。
簡単に作り方を説明すると、小麦粉を水で溶いて練り水に漬けておきます。
しばらく放置して底にたまったものがデンプンです。
上澄みを捨てて沈殿物を乾燥させたものが久寿餅の素になります。
〇わらび餅とは
山菜の蕨(わらび)が入っているのではなくて、わらびの根っこからとれるデンプンを使って作ったものが”わらび餅”です。
ところが、根っこは非常に細くて、特別長いわけでもありません。だからデンプンが採れる量も非常に少ないので、昔からとても高価な食材でした。
今でも100gあたり1500円~2500円くらいしますので、決して安価な食材という訳ではありません。
色は黒に近い茶色と灰色をしていますが、その代わりに作り立ては、食感と風味が他のデンプンから作られるより遥かに良いので、お茶席など高級和菓子の一つとして定評があります。
本物のわらび餅とは、わらびの根を乾燥させたわらび粉100%で作ったものです。
・わらび(蕨)とは?
シダ植物の一つで、 シダ目・コバノイシカグマ科・ワラビ属の植物です。
春にしんめが出て、日当たりの良い場所を好み、日本ではstrong>「イヌワラビ、クマワラビ、コウヤワラビ」などが生息しています。
・手軽なわらび餅とは?
現代ではわらび粉を作る作り手がとわらびの減少と、食感などが長持ちしないことから別なデンプンで作られています。
主にサツマイモやタピオカなどのデンプン、つまり市販の片栗粉などから作られているわけです。
→ わらび餅について詳しくはこちらへどうぞ。
自生しているわらび
〇きな粉餅とは
一言で表すと「きな粉を付けた餅全般」の事を指します。
お米で作ったお餅に、きな粉をまぶしたもの
クズで作ったお餅に、きな粉をまぶしたもの
カタクリなどデンプンで作ったお餅に、きな粉をまぶしたもの
小麦粉で作ったお餅に。きな粉をまぶしたもの
どれも”きな粉餅”になります。
因みにきな粉とは、乾燥させて炒った大豆を挽いて粉にしたものです。
語源は”黄色をした粉”→”黄色なきな粉”→”黄な粉(黄な粉)”から来ています。
つまり新鮮で風味のあるきな粉を食べようと思ったら乾燥大豆、つまり節分の豆まき用の豆を炒ってすりおろすか挽いてください。もしくはフードプロセッサーを使えば簡単に粉にできるでしょう。
・きな粉を使った代表的な食べ物
安倍川餅 (つきたての餅にきな粉と砂糖をまぶしたもの)
わらび餅 (わらび粉やイモのでんぷんから作った餅)
ぼた餅 (米を潰して作った餅)
葛(くず)餅 (植物のクズから作った餅)
信玄餅 (白玉粉・餅粉から作った餅)
きなこねじり(きな粉と水飴だけで作ったお菓子)
きな粉飴 (きなこねじりと同じく)
次は、くず餅とわらび餅ときな粉餅の基本的な作り方を紹介します。
くず餅とわらび餅ときな粉餅の作り方から、違いを見比べる
それぞれ、作り方を見てみて、違いはあるでしょうか?比べてみて下さい。
〇くず餅の作り方
1、くず粉50g・砂糖適量を鍋に入れて、水250mlを少しづつ加えながら混ぜます。
2、始めは強火で温め、粘りが出て来たら中弱火にして練り上げます。
3、透明になったらバットに移して形を整え、冷めたらラップをかけて冷蔵庫へ。
4、くず餅が冷え切ったら、お好みの大きさに切って盛り付けて完成!
クリックで拡大します。
〇わらび餅の作り方
1、わらび粉100g・砂糖20g・水300mlを鍋に入れて混ぜ合わせます。
コツ:塩一つまみで甘みが増します。
2、強火で温めて粘りが出て来たら弱火で練ります。
3、半透明になったらバットに移して形を整え、
バットに移して冷水で冷まして固めます。
4、お好みの大きさに切って盛り付けて完成!
※わらび粉の3倍が通常の水の量で、これより多いと柔らかめ、少ないと固めになります。
クリックで拡大します。
〇きな粉餅の作り方
実は”きな粉餅”は全ての餅にきな粉を着けるだけだから、決まった作り方はありません。つきたてのお餅、作り立てのお餅に砂糖を混ぜた”きな粉”をまぶして完成です!
もしくは”きな粉”を混ぜて練ったもの、ついた物も”きな粉餅”になります。
くず餅とわらび餅ときな粉餅はどこが有名?
〇くず餅の名産地
関西風・葛餅は奈良産のくずが始まりで、奈良・京都で昔から作られています。
関東風・久寿餅は、東京都日蓮宗大本山・池上本門寺とも、神奈川県川崎市川崎大師といわれています。
※葛餅と久寿餅は別な食べ物になります。
「くず(葛)から作られた葛餅」と「小麦粉から作られたのが久寿餅」です。
〇わらび餅の名産地
古くから京都で作られ続けています。京都・奈良の餡子が入ったわらび餅が元々のわらび餅ですが、世間に広まっている四角い”わらび餅”、関東の葛餅の形からヒントを得て、現在に定着するようになりました。
しかし、静岡県掛川市も鎌倉時代からの名産地なんですよ。
→ わらび餅について詳しくはこちらへどうぞ。
〇きな粉餅の名産地
実はきな粉の発祥は詳しくは伝わっていません。
大豆自体は約2000年前頃から中国で栽培されていましたが、そこからきな粉が作られたかどうかは不明です。また、日本でもいつ誰がきな粉を作ったのかも不明です。
奈良時代・700年代にはきな粉が存在していて、鎌倉時代・1200年代には大豆が栽培されていました。日本が発祥ではないかという意見がありますが、不明なため憶測になります。
信玄餅は山梨県・長野県、安倍川餅は静岡市など、他には東京・川崎の久寿餅、奈良・京都のくず餅とわらび餅などがあります。
しかし、「正しいきな粉餅」というものはないので、お餅にきな粉がついている全国のお餅が名産地にしておきましょう!
最後に、くず餅とわらび餅ときな粉餅の違いについて
これまで3つの餅についてお話してきましたが、要約すると、
くず餅は、葛(くず)の根から作られたデンプン、くず粉で作られたもの。
わらび餅は、わらびの根から作られたデンプン、わらび粉で作られたもの。
きな粉餅は、全ての餅にきな粉を着けたもの。
そして、くず餅とわらび餅はお手軽にサツマイモやタピオカなど別な植物から作られたデンプン、つまり市販の片栗粉で代用して作られたものがスーパーなどに並んでいるくず餅とわらび餅ということになります。
本物を食べるなら、自分で作るか名産地に食べに行ってみて下さい。
また、それそれ違う食べ物ということが分かったので、これから機会があったら食べ比べてみて下さい。