鱈の旬の季節と生息地と世界を変えた魚の歴史
2016/03/28
冬になるとタラ鱈がお店に並びますが、鍋でも、フライでも、ムニエルでも、フライパンで炒めるだけでも、美味しい魚ですよね。
このタラという魚は、北半球と南半球に生息しているので、年中旬の季節といっていいでしょう。そんなタラについて紹介をしますね。
鱈ってどんな魚? 仲間の種類と旬の季節
鱈は世界中に生息していて、太平洋、大西洋、オセアニア周辺などで500種類以上になります。そして、”タラ(鱈)”という魚の種類は、12の科に分類されています。
日本では水温の低い海で捕れるので、北海道や東北地方より北、オホーツク海付近が有名な漁場で知られています。
○たら目12科
ラニケプス科 Ranicipitidae: 北東部大西洋に生息 1種類
アシナガダラ科 Euclichthyidae: オーストラリア、ニュージーランド周辺に生息 1種類
ソコダラ科 Macrouridae: 世界中の深海に生息 300種類以上
ヒカリダラ科/ウナギダラ科 Steindachneriidae:メキシコ湾・カリブ海・南アメリカ北東部沖に生息 1種類
チゴダラ科 Moridae: 世界中の深海に生息、淡水に生息する種類もいます
カワリヒレダラ科 Melanonidae: 世界中の海域に生息
マクルロヌス科 Macruronidae: 大西洋と南半球に生息
サイウオ科 Bregmacerotidae: 熱帯・亜熱帯地域に生息。河口付近に生息する種類もいます。
ムラエレノビス科 Muraenolepidae: 南半球の冷温水域
ピュキス科 Phycidae: 大西洋・南アフリカ・ニュージーランド・日本沖に生息
メルルーサ科 Melucciidae: 大西洋・インド洋南西・東太平洋・ニュージ―ランド周辺に生息
タラ科 Gadidae: 北極・大西洋・太平洋付近に生息 30種類
1種類だけ北アメリカ大陸北部とロシア付近に生息
この中で普段日本の食卓に並んでいるタラは、”タラ科”が多くて、マダラ・スケトウダラ・コマイ・タイセイヨウマダラは、切り身の他、たらこ(鱈子)や明太子などで有名なのでよく耳にすると思います。
また、かまぼこなどでよく使われるすり身は、英語でも”Surimi”で通じるくらい、海外でも定着し始めています。
タラの旬の時期はご存知の通り冬です。
基本的にタラは深海に生息することが多い魚なので、夏場は深い場所に移動します。
冬場は水温も下がってくるせいか、比較的浅い場所に移動するので、捕獲しやすく、身が引き締まっていておいしいといわれています。日本近海の場合は冬全般や、12月後半~2月下旬が旬のものが殆どです。
逆にオセアニア周辺や南米では季節が反対になるので、種類こそ少ないものの日本の夏に、現地の冬に多く捕獲されます。
因みに、大半のタラが水深100m~1000m以上に住んでいる深海魚となります。
次に、私達が普段食事でお世話になっている”たら科”の魚達について、もう少し細かく紹介していきます。
鱈ってどんな魚? 生息地
○たら科の魚達
日本の市場に出回っているのはマダラ・スケトウダラ・コマイの3種類ですが、それ以外にも沢山タラ科の魚がいるので、ここで紹介します。
簡単な紹介ですが、長くなるので「サラッ」と流して見て下さいね。
マダラ (タラ目タラ科マダラ属) Pcific Cod
通称”タラ・ホンダラ”と呼ばれていますが、各地方では、マイダラ(富山)・スイボウ(石川)・ヒゲダラ(神奈川)・アカハダ(兵庫)・タチ(北海道)
など呼び方が色々あります。
北日本、朝鮮半島と北緯3度以上の北太平洋の大陸棚付近(水深約45~450m)に生息していますが、北に行くほど浅い海で捕ることが出来ます。冬が旬で、体長は平均約1mくらいに成長して、どのような調理法でも合います。
コマイ (タラ目タラ科コマイ属) Saffron Cod
日本海、北太平洋に生息している。体長平均約30cmくらいに成長して、干しものが有名。12月後半から2月下旬が旬。
スケトウダラ (タラ目タラ科マスケトウダラ属) Walleye Pollock
山口県・茨城県より北の北太平洋、オホーツク海、ベーリング海に分布、水深約1500m付近以上で生息している。
体長は平均60cmくらいで、産卵期は2月~4月。日本でも食用としてなじみ深い魚で、たらこが出れることでも有名。スケソウ・ミンターイ・スケソ・メンタイなどとも呼ばれる。
スケトウダラの真子(マコ)は卵巣の事で、身の10~20倍の値が付く
白子(シラコ)は精巣の事です。
タイセイヨウダラ (タラ目タラ科マダラ属) Atlantic Cod
北大西洋沿岸に生息。体長は45~120cmくらいまで成長すします。
冷水を好んで、大型になるほど深いところに生息。100m~180m付近の大陸棚で産卵します。中石器時代から食べられてきた魚で、今でも商業価値が高いです。2月~4月が旬になります。
カワメンタイ (タラ目タラ科カワメンタイ属) Burbot
ヨーロッパ、シベリア、北アメリカに広く分布していて、体長は通常40cmですが、100cmくらいにまで成長するものも中にはいます。
タラの中では唯一淡水に生息している種類で、
水温の低い湖や流れのゆるい川に棲息しています。また夜行性で、他の魚を捕食する貪欲な魚なので害魚とともいわれています。味が良く、釣りの対象としても人気があり、卵はキャビアの代用にもなっています。
モンツキダラ (タラ目タラ科モンツキダラ属) Haddock
北東大西洋のピンスケー湾からパレンツ海、アイスランド周辺、北大西洋のニューファンドランド周辺の水深40~300mに棲息しています。
体長45~80cmで2~6月が旬。
稚魚はクラゲの触手の下に隠れているので、広い範囲に生息しています。また食用として価値が高くて、生でも食べられています。
ホワイティング (タラ目タラ科ホワイティング属) Whiting
北ノルウェー、アイスランド、地中海、黒海付近の水深200mより浅い場所に生息。体長は平均70cmくらいに成長して稚魚はクラゲと共存しています。
ミナミダラ (タラ目タラ科ブタスダラ属) Norman
アルゼンチン・パタゴニア、チリ、ニュージーランド、スコシア海の大陸棚斜面に生息。体長は平均46cmに成長して、食用としてはすり身にされることが多い種類です。
ブタスダラ (タラ目タラ科ブタスダラ属) Blue Whiting
アイスランド、地中海、アドリア海の水深300m~400mに生息。
養殖している魚の餌や油の原料にされることが多いです。
シロイトダラ (タラ目タラ科ボラキウス属) Pollock、Boston blues
東大西洋のパレンツ湾~ピスケー湾、アイスランド、グリーンランド、西大西洋のラプランドル海付近に生息。
体長は60cm~120cmに成長して、群れを成しています。1~4月が産卵期でイギリスやノルウェー付近が産卵場所です。味が良いため商業価値が高く、釣りの対象としても人気があります。
ノルウェーコダラ (タラ目タラ科フランスダラ属) Norway Pout
北極海、アイスランド、ノルウェー、イギリス付近の水深80~200m付近に生息。
産卵期は1~7月で平均全長35cmくらいに成長。
フランスダラ (タラ目タラ科フランスダラ属) 学名 Trisopterus luscus Linnaeus
スウェーデンから地中海北部付近の水深30~100mの岩礁地帯に生息。
幼魚のときは浅瀬の砂底にいることが多くて、産卵期は3月~4月。体高が体長の1/3もあるのが特徴の魚です。主にヨーロッパで食用として広く流通しています。
チゴダラ (タラ目チゴダラ科チゴダラ属) Japanese codl
通称”ドンコ”と呼ばれていて、ウミナマズ(和歌山)・オキナマズ(高知)・ノロマ(茨城)・ビゼンダイ(鹿児島)などとも呼ばれています。
東京湾から南、東シナ海の水深150~650mの砂や泥底に生息しています。体長は平均40cmくらいに成長して、どのような調理法でも合います。
エゾイソアイナメ (タラ目チゴダラ科チゴダラ属) Brown hakeling
チゴダラ同様、”ドンコ”と混合した名称で呼ばれています。見た目は似ているけど、目の大きさが異なり別な水深に生息している為、チゴダラと同じ種類ではないかと、長年議論されていますが未解決のままです。
函館から南の太平洋沿岸部の水深100m以上に生息しています。
ソコクロダラ (タラ目チゴダラ科ソコクロダラ属) Morid cod
東京では”ヒゲダラ”とも呼ばれていて、相模湾・駿河湾・五島列島南部・西太平洋の深海の400m付近に生息しています。チゴダラ科の中では最も大きく成長して、他のタラに比べるとやや黒っぽいです。高級な食用魚に入り珍重されて、体長が100cmくらいに成長する種類です。
トウジン (タラ目ソコタラ科トウジン属) 学名 Coelorinchus japonicus
チョッピ(神奈川)・ゲボウ/ゲッホ(静岡)・ネズミ(三重)と呼ばれています。
南日本の太平洋沿岸や北大西洋の暖かい海域、
水深300~1000mに棲息する、深海魚の一種。
体長は平均70cmくらいに成長します。
他にも日本付近でとれるタラの仲間たち。
ムネダラ(タラ目タラ科マダラ属)
テナガダラ(タラ目ソコタラ科テナガダラ属)
イタチウオ(タラ目タラ科マダラ属)
カワメンタイの写真
タラの仲間の中で唯一淡水にすんでいる魚
鱈の世界の歴史 タラ戦争
タラ戦争という争いが、1958年~1976年に漁業水域に関して、アイスランドとイギリスの間で起こりました。
冷戦のCold WarをもじってCod Warという呼び名が定着しているので日本語でも直訳でタラ戦争と呼んでいます。
アイスランドはデンマークの政権元、ヨーロッパでも最貧国の一つでした。1901年に船を手に入れて、タラを始め海洋事業に乗り出して成功を収めます。
第2次大戦中もアメリカの保護の元、魚をヨーロッパに供給し続けて、1944年に独立して、国の主要産業として事業を拡大していきますが、戦後まもなく各国がアイスランド周辺水域で操業を行った為、漁獲量が激減します。そこで、自国周辺での漁業事業を制限したところ、イギリスと衝突が起こりました。
現在も漁獲量を制限して、水産資源の回復に努めています。
第一次タラ戦争 1958年~1961年
アイスランドの12海里を漁業水域に設定
第二次タラ戦争 1972年~1973年
アイスランドの漁業水域を12海里~50海里に拡大、戦争に発展。
イギリスの年間漁獲量を13万に制限
第三次タラ戦争 1975年~1976年
制限をしているにも関わらず、水産資源の減少は回復しないため、アイスランドの漁業水域を200海里に設定。イギリスは漁獲量を年間5tまでに制限することで合意、現在に至ります。
干したタラ 海外ではこんなサイズも当たり前?
最後に鱈ってどんな魚かについて
日本では、特別高価でも珍しい魚でもないタラですが、ヨーロッパでは主流で個体数が減っている重要な魚だったんですね。
日本では、マダラ・スケトウダラ・コマイの3種類が販売されていています。この他、沢山のタラの仲間が日本近海で稀にとれますが、残念ながらお魚屋さんに並ぶことは滅多にないでしょう。
タラを見かけたら何ダラか見てみるのも面白いかもしれませんね。
それでは、これからもタラをご堪能ください。
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